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例としながら市民セクター支援の基盤整備の中でもとりわけ重要になっている財政支援について新たな試みの方向性を探る。まず、市民セクターの支援に果たす地域福祉基金の現状について都道府県と指定都市のレベルの現状を概観したうえで、全国各地に影響を与えたとされる東京都地域福祉振興基金の事例を検討し、既成制度にかんしていかなる見直し課題が浮上しているかを明らかにする。また、東京都国際平和文化交流基金の改善事例を紹介するなかで、今後の地域福祉基金をはじめとする市民セクターへの財政支援のあり方を考察する。本章における考察から確認されることは、助成事業のコンセプトが「補完的特定事業助成」から「独自団体育成助成」ヘシフトされなければならないし、すでにそうした方向へ改善しつつあるということである。
第4章「市民セクターにおける組織管理」(隈本純)では、非営利組織における組織管理は営利組織や行政組織の組織管理と同様の基本原則にもとづいているという前提にたって、市民セクターにおける組織管理の諸側面を考察する。市民セクターといっても多様であるが、本章では、非営利組織の非営利活動としてボランティア組織の活動に焦点を合わせ、組織管理を人的資源管理、金銭的資源管理、アウトプットとしての財・サービス資源管理、情報資源管理のそれぞれの側面から、営利組織の管理側面と比較しながら分析し、管理過程における行政組織との連携、あるいは地域社会との関係等を検討する。分析の素材としては、交換留学を支援する団体、留学生と地域住民との文化交流を支援する団体、野外活動を中心として小中学生に外国人児童との交流を促進する団体等の主として国際交流団体である。
最後のパートである「?V 事例研究:海外」では、イギリス、ドイツおよびオーストラリアの各国における市民セクター活動を考察する。
第5章「イギリスにおける市民セクター活動」(武藤博己)では、同国において市民セクターの範躊に対応している「ボランタリー・セクター」の全体像を把握することが困難であることを指摘したうえで、このセクターと重要な関係にあるチャリティの制度を検討し、さらに同セクターをめぐる様々な状況を検討する。イギリスのチャリティ制度は17世紀から始まっており、現在でも貧民の救済、教育の推進、宗教の促進およびコミュニティのための活動という4っが目的となっている。本章では、同国に定着しているチャリティの法的構造、資格要件、会計責任、税制上の優遇措置、チャリティ委員会の役割等について考察する。また、ボランタリー・セクターのネットワーキング組織の1つであるNCVOの活動、グロスターシャ(カウンティ)およびイズリントン(ロンドン・バラ)という

 

 

 

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